コンタクトが乾く・ゴロゴロする原因と対処

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「コンタクトを入れていると夕方には目が乾く」「ゴロゴロして途中で外したくなる」——視能訓練士として眼科で働いていると、この相談を本当によく受けます。

そして多くの方が、原因を誤解したまま対処しています。乾くから水分の多いレンズに替える、目薬を差す回数を増やす——どちらも的を外していることがあります。

この記事では、コンタクトレンズで目が乾く・ゴロゴロする仕組みを、日本眼科学会の診療ガイドラインや研究データをもとに整理します。そのうえで、今日から変えられる対処と、これは眼科に行ってくださいという判断の目安までまとめました。

先にいちばん大事なことを
痛み・充血・見えにくさ・強いまぶしさのいずれかがあるときは、この記事の対処を試す前に眼科を受診してください。角膜に傷や感染が起きている可能性があります。この記事は一般的な情報の提供であり、個別の診断や治療の代わりにはなりません。

「乾く」の正体は、水分不足ではないことが多い

目の表面は、ただの水で覆われているわけではありません。涙は層になっていて、いちばん外側に油の層があります。この油がフタの役割をして、涙が蒸発するのを防いでいます。

油を出しているのが、まぶたのふちに並ぶマイボーム腺という組織です。まつ毛の生え際をよく見ると、小さな点が並んでいるのが見えます。あれが油の出口です。

ここが詰まったり、油の質が悪くなったりする状態をマイボーム腺機能不全(MGD)と呼びます。フタが機能しないので涙がどんどん蒸発する。涙の量は足りているのに乾くという状態が起きるのは、これが理由です。

ソフトコンタクトレンズは、それ自体がリスク因子

ここが今日いちばん知ってほしいところです。日本眼科学会の『マイボーム腺機能不全診療ガイドライン』(日眼会誌 127巻2号・2023年)には、発症に関連する因子としてこう書かれています。

アジア人、地方居住者、端末表示装置作業、喫煙、ソフトコンタクトレンズ装用、緑内障点眼薬の投与などがマイボーム腺機能不全のリスク因子としてあげられる
──マイボーム腺機能不全診療ガイドライン BQ-5

ソフトコンタクトレンズ装用と、パソコン作業。この2つが並んでいます。多くの方が、両方を毎日8時間続けているわけです。

さらに歴史をさかのぼると、同ガイドラインには1980年の最初のMGDの報告が「コンタクトレンズ不耐症の患者において、マイボーム腺開口部が角化物により閉塞していた」というものだったと記されています。MGDという概念は、そもそもコンタクトレンズが合わない人の観察から生まれました。

つまり「コンタクトをすると乾く」というのは気のせいでも体質だけの問題でもなく、構造的に起こりうることなのです。

誤解1|「含水率が高いレンズのほうが乾きにくい」は逆のことがある

レンズを買うとき、含水率という数字を見たことがあると思います。レンズに含まれる水分の割合で、50%以上を高含水、それ未満を低含水と呼びます。

「水分が多いほうが潤う」と考えるのは自然です。ところが実際には、高含水レンズのほうが乾燥感が強く出ることがあります

理由は、レンズの水分が蒸発するからです。米国学術研究会議(National Research Council)の報告書では、この現象がこう説明されています。

高含水レンズは、同条件下で低含水レンズよりも脱水しやすい。レンズ内の水分が蒸発で失われると、それを補うための水分が角膜から供給される
──Considerations in Contact Lens Use Under Adverse Conditions(NCBI Bookshelf)

レンズが乾くと、目のほうから水分を吸い上げる。だから「水分が多いレンズ=潤う」とは限らないわけです。同報告では、薄いレンズほど水分を失いやすいことにも触れられています。薄くて高含水のレンズは、つけ心地が良い一方で乾燥には不利になりうる、ということになります。

ではどうすればいいのか
「低含水なら乾かない」という単純な話でもありません。素材(シリコーンハイドロゲルかどうか)、厚み、レンズの表面性状、そしてその人の涙の状態——すべてが関係します。ここは自己判断ではなく、眼科で相談すべき領域です。「夕方に乾く」「特に金曜がつらい」など、いつ・どんなときに乾くかを具体的に伝えると、レンズ選びの精度が上がります。

誤解2|「ちゃんとまばたきしている」——実は激減しています

パソコンやスマホを見ているとき、まばたきの回数がどれだけ減るか、数字で見ると驚きます。

状態 まばたき回数(回/分)
リラックスしているとき 約22
本を読んでいるとき 約10
パソコン作業中 約7

※オフィスワーカー104名を対象とした研究の報告値。数値は研究や条件により幅があります。

3分の1以下です。しかもドライアイの症状がある方を対象とした研究では、会話中16.8回だったまばたきが、パソコン作業を始めると6.6回に減り、30分後には5.9回とさらに落ちたと報告されています。乾いている人ほど、乾く行動をとってしまうという皮肉な状況が起きています。

「不完全なまばたき」という落とし穴

回数だけの問題ではありません。画面を見ているときはまぶたを最後まで閉じきらない「不完全瞬目」が増えることも報告されています。

これが効いてきます。まばたきは、涙を目の表面に広げるだけでなく、まぶたを閉じる圧力でマイボーム腺から油を押し出す役割も担っているからです。閉じきらないまばたきでは、油が十分に絞り出されません。

回数が減り、質も落ちる。そこにコンタクトレンズが加わる。乾いて当然の条件が揃っているわけです。

ゴロゴロする原因は、タイミングで見分けられる

「ゴロゴロする」は原因がいくつもありますが、いつゴロゴロするかで見当がつきます。

タイミング 考えられること まず試すこと
入れた瞬間 裏表が逆/レンズの破損/ほこりや汚れの付着 いったん外して確認。破れていれば新しいものに
数時間後から 乾燥/レンズへの汚れの蓄積 装用時間を見直す。ケア方法を確認する
毎日ずっと レンズが目に合っていない可能性 眼科で再度合わせてもらう
外したあとも続く 角膜や結膜に傷や炎症が起きている可能性 装用を中止して眼科へ

とくに最後の行が重要です。レンズを外しても違和感が残るのは、レンズの問題ではなく目の問題だというサインです。

裏表の見分け方

意外と多いのが単純な裏表の間違いです。レンズを指に乗せて横から見たとき、きれいなお椀型なら正しい向き。ふちが外に反り返って見えたら裏返しです。裏返しで入れるとゴロゴロしやすく、ずれやすくなります。

この症状があれば、迷わず眼科へ

視能訓練士として、ここだけは強く書いておきたいところです。以下は様子を見てはいけないサインです。

  • 痛みがある(ゴロゴロではなく「痛い」)
  • 白目が赤い(とくに黒目のまわりが赤い)
  • 見えにくい、かすむ、視力が落ちた感じがする
  • まぶしくて目を開けていられない
  • 目やにが増えた、涙が止まらない
  • レンズを外しても症状が続く

これらは角膜の傷や感染が起きているときに出ることがある症状です。角膜の感染症は進行が速く、対応が遅れると視力に影響が残ることもあります。「明日まで様子を見よう」がいちばん避けたい判断です。

受診するときは、コンタクトレンズを外さず、ケースと使っているレンズを持っていくと診察がスムーズです(外した場合もレンズは捨てずに持参してください)。使用しているケア用品も分かるようにしておくと、原因の特定に役立ちます。

今日からできる対処

受診が必要なサインがない場合、生活の中で変えられることがあります。効果の裏づけがはっきりしているものから順に挙げます。

1. まぶたを温める(温罨法)

対処の中で、最も強い根拠があるのがこれです。先ほどの診療ガイドラインでは、温罨法(まぶたを温めること)についてこう結論づけられています。

温罨法はマイボーム腺機能不全の自覚症状、meibumの質を改善する。マイボーム腺機能不全への治療として行うことを強く推奨する
──同ガイドライン CQ-18/エビデンスの強さ A(強)/委員12名中12名(100%)が「実施する」を強く推奨

診療ガイドラインでエビデンスレベルA・全員一致で「強く推奨」という評価は、そう多くありません。42篇の研究を評価した結果として、自覚症状・油の質・涙の安定性・角膜の状態のいずれにも改善が報告されています。

理屈も明快です。マイボーム腺の油は温度が下がると固まります。温めればゆるんで出やすくなる。詰まりかけた状態を、物理的に解消しにいくわけです。

蒸しタオルでもできますが、すぐ冷めるので続きません。ガイドラインでも、必要なデバイスが安価で再利用可能である点が触れられています。毎日続けることが前提なら、温度が保てる道具のほうが現実的です。

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温度を保てるので、毎日続けやすいのが利点。就寝前の習慣にしている方が多い印象です。低温やけどを避けるため、必ず製品の使用時間・温度設定を守ってください。まぶたに傷や炎症がある場合、目の手術後の場合は、使用前に眼科に相談を。

職場で使いたい、まず試してみたいという場合は、使い捨てタイプが手軽です。開けてすぐ温かくなるので、昼休みの数分でも実行できます。

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外出先や職場向け。こちらも使用時間を守り、就寝時に長時間つけたままにしないよう注意してください。

2. まぶたのふちを清潔にする(眼瞼清拭)

同ガイドラインでは、眼瞼清拭(まぶたのふちを洗うこと)についても触れられており、自覚症状や涙液層破壊時間の改善の可能性が示されています。ただし推奨の強さは「弱く推奨する」で、温罨法ほど強い評価ではありません。使用するクレンジング剤の種類によっては有害事象が生じる可能性がある点も指摘されています。

順番としては温めてから洗うのが理にかなっています。油をゆるめてから、出口の汚れを落とすイメージです。アイメイクをする方は、まつ毛の生え際にメイクが残りやすいので、この工程の意味が大きくなります。

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一般の洗顔料は目に入るとしみるため、目元専用に作られたものを。目に入れて良い製品かどうかを必ず確認し、しみる・赤くなるなど異常があれば中止してください。コンタクトは外してから行います。

3. まばたきを「意識的に、最後まで」する

道具もお金も要らない対処です。作業中は回数が減り、閉じ方も浅くなるので、意識してぎゅっと閉じるまばたきを数回入れます。油を押し出す動きを、自分で足してあげるイメージです。

おすすめはタイマーで区切ること。「20分ごとに、20秒間、20フィート(約6m)先を見る」という考え方が知られていますが、続けるのが難しければ、トイレに立つたびに10回ぎゅっと閉じるくらいの雑な決め方のほうが実行できます。

4. 画面の位置を「目線より下」にする

見落とされがちですが、ここは体感が変わりやすい部分です。画面が目の高さより上にあると、目を見開く姿勢になり、露出する面積が増えて涙が蒸発しやすくなります。逆に視線を下げると、まぶたが自然に半分下りて、露出面積が減ります。

ノートパソコンを直置きしていると、画面が低くなるぶん目線は下がりますが、今度は首が疲れます。外付けモニターなら少し下げ気味に、ノートなら台で高さを調整して姿勢と両立させるのが現実解です。

モニター台(高さ調整用)

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画面の高さと姿勢はセットで考えると調整しやすくなります。下のスペースが片づくという副次的な利点も。

5. 湿度を上げる(特に冬とエアコン下)

涙の蒸発は、周囲が乾いているほど速くなります。エアコンの風が直接顔に当たる席は条件として最悪なので、まず風向きを変えられないか確認してください。それだけで変わることがあります。

席を動かせない場合は、卓上の加湿器で自分の周囲だけでも湿度を上げる方法があります。

卓上加湿器

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デスク周りの局所的な湿度対策に。水は毎日交換し、タンクをこまめに洗ってください。不衛生な状態の加湿器は、かえって健康を害することがあります。

6. 装着液を使う

レンズを入れる前につける液です。装用開始直後の違和感が気になる方に向いています。乾燥そのものを解決するものではありませんが、入れた瞬間のゴロつきが軽くなることがあります。

なお目薬については、コンタクトレンズをつけたまま使えるかどうかが製品によって異なります。防腐剤がレンズに吸着することがあるためです。自己判断で選ばず、眼科または薬剤師に相談してください。

コンタクトレンズ装着液

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使用前に添付文書を確認し、ご自分のレンズの種類に対応しているかをチェックしてください。

眼科では、こう伝えると話が早い

「なんとなく乾く」と伝えるより、具体的な情報があるほど的確なレンズ選びにつながります。受診前に、次の点を整理しておくのがおすすめです。

  • 1日の装用時間(何時に入れて、何時に外すか)
  • 乾く時間帯(朝から?夕方だけ?)
  • 今使っているレンズの名前(箱を持参するのが確実です)
  • 作業環境(1日何時間パソコンを見るか、エアコンの風が当たるか)
  • ケアの方法(こすり洗いをしているか、ケースはいつ替えたか)
  • すでに試したこと(目薬、温めるなど)

とくに装用時間は正直に伝えてください。長すぎる場合、それ自体が原因のことがあります。怒られるのではという心配より、合わないレンズを使い続けるほうがずっと問題です。

コンタクトレンズは高度管理医療機器です。処方や度数の変更、レンズの種類の選択は、必ず眼科で検査を受けたうえで判断してください。この記事は特定の製品の使用を勧めるものではなく、一般的な情報の提供を目的としています。

よくある質問

Q. ワンデーと2ウィーク、乾きにくいのはどちらですか?

一概には言えません。ワンデーは毎日新しくなるので汚れの蓄積という点では有利ですが、乾燥のしやすさは素材や含水率、厚みによって決まる部分が大きいためです。汚れが原因なら1日使い捨てで改善しやすく、素材が合っていないなら替えても変わりません。どちらが原因かは検査で分かる部分なので、眼科で相談してください。

Q. 目薬を差せば解決しますか?

一時的に楽にはなりますが、油の層が足りていない場合、水分を足してもすぐに蒸発してしまいます。差す回数がどんどん増えているなら、原因が水分不足ではないサインかもしれません。温めるアプローチを試す価値があります。

Q. 温めるのは1日何回、何分くらいですか?

診療ガイドラインでは温罨法を強く推奨していますが、統一された時間・温度の基準までは示されていません。研究では1日2回の実施が用いられているものがあります。市販の製品を使う場合は、まずその製品の指定する使用時間・温度を守ってください。長ければ良いというものではなく、低温やけどのリスクがあります。

Q. カラーコンタクトのほうが乾きやすいと聞きました

製品によります。着色部分の構造や素材、厚みは製品ごとに違うためです。ただし度が入っていないカラーコンタクトも、度ありと同じ高度管理医療機器です。眼科で検査を受けずに購入している方が今も少なくありませんが、目の形は人によって違うので、合わないレンズを使えばトラブルの原因になります。

Q. 乾くのでレンズを外して過ごす日を作るのは有効ですか?

有効な場合があります。目を休ませる日を作ること自体は理にかなっています。メガネを併用できる環境を整えておくと、目の状態が悪いときに「無理して入れる」という選択をせずに済みます。

まとめ

長くなったので、要点だけ整理します。

  • 「乾く」の正体は水分不足ではなく、油の層の問題であることが多い。だから水を足しても解決しないことがあります
  • ソフトコンタクトレンズ装用とパソコン作業は、どちらも診療ガイドラインにリスク因子として挙げられています
  • 含水率が高いレンズが乾きにくいとは限りません。高含水レンズは脱水しやすく、角膜から水分を奪うことがあります
  • パソコン作業中、まばたきは3分の1以下に減ります。しかも閉じ方が浅くなります
  • 最も根拠が強い対処は、まぶたを温めること(診療ガイドラインでエビデンスA・強く推奨)
  • 痛み・充血・見えにくさ・強いまぶしさがあれば、対処より先に受診

毎日つけるものだからこそ、「こんなもの」と思って我慢している方が多い分野です。ですが乾き方やゴロつき方には理由があり、変えられる部分がかなりあります

まずは今夜、まぶたを温めるところから試してみてください。それで変わらなければ、遠慮なく眼科を頼ってください。

【参考文献】
・マイボーム腺機能不全診療ガイドライン作成委員会「マイボーム腺機能不全診療ガイドライン」日本眼科学会雑誌 127巻2号(2023年)
・Considerations in Contact Lens Use Under Adverse Conditions, National Research Council(NCBI Bookshelf)
・まばたき回数に関する各研究報告

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